MariaDBの開発コミュニティMariaDB Foundationではなく、サポートや有償ツールを販売しているMariaDB Corporationが12ヶ月の間に一気にグダグダすぎることになっていたのでまとめておく。
MariaDB Foundationは複数の企業がスポンサーをしているものの、もちろんMariaDB Corporationが筆頭のスポンサーであり、コアメンバーにMariaDB Corporationの社員もいる。
一連の事案がニュースとしてのバリューがないのかMariaDB自体を追ってる人がいないのか、上場するとの発表以外は日本のIT系メディアではほとんどスルーされている状態である。
顛末
- 2022年2月1日 NYSE上場のSPAC(特別買収目的会社)と合併する形でNYSEに上場すると発表
※SPAC: https://smbiz.asahi.com/article/14622436 - 2022年5月-6月 JPモルガンとゴールドマンがこの案件の事務幹事会社を降りる (この時点でいろいろヤバい)
※ https://www.thedeal.com/spacs/jpm-goldman-cut-ties-with-angel-pond-mariadb-deal/ - 2022年12月19日 SPACとの統合で看板を掛け替えMariaDBが上場していることに
初値は$11.55だが同日終値は$6.75 その後数日で初値の1/3以下に下落 - 2023年1月18日 出資者の99%が資金撤退の方向済み 6月までに資金ショートのリスクが出る
※ https://twitter.com/ElinaLappalaine/status/1615655206460481537 - 2023年2月1日 従業員の8%をリストラすると発表
※ https://www.marketscreener.com/quote/stock/MARIADB-PLC124600271/news/MARIADB-PLC-Regulation-FD-Disclosure-form-8-K-42872884/
これが12ヶ月足らずの出来事である。この後で元々の投資家の一角だった中国のアリババが7%弱の株を取得していたり別の投資家グループによる動きも多少はあるが株価は$3台の最安値を付けていたりする。
なおSPACを使った上場は、ベンチャー企業の資金調達を支援して成長を加速させる可能性を秘めているものの、本来の上場の基準にはるかに満たないような企業まで上場させることになってしまうこともあるため裏口上場と呼ばれたりしているケースも。上記と同じような事案がすでに多発していて2022年3月末にSPAC案件を担当する証券会社や投資銀行への規制の強化がされ、2社のアドバイザー引き受けからの撤退につながっている。
2023年2月15日追記
2月13日付で12月31日締めの第一四半期決算が公開されたが売り上げの1.5倍ぐらい販管費にかかる状態は変わらず。決算書の読み方を間違えてると思いたいが債務超過状態に見える。現預金や売掛金がそれなりにあるものの、この状態の後で出資者が撤退となると資金ショートのリスクも現実味を帯びてくる。
2023年4月9日追記
上記の1月18日部分を修正。元記事を翻訳しつつ読んでたけど誤りがあった模様。出資者の資金引き上げはまさかの上場的なものの前日。。。
2023年5月30日追記
4月上旬にしばらく空席だったCFOが採用され、いくつかプレスリリースを打って挽回を試みたものの、5月の中旬にはついに株価が1ドルを切ってしまった。
2023年5月31日追記
今度はCEO, CRO, CTO交代の記事。CRO (chief revenue officer)がもともといて交代なのかは知らんけど。
finance.yahoo.com
ちなみに6月5日付けで就任するCTOはPostgreSQLのコントリビューターだったりOracle DBの記事書いていたりでMySQLやMariaDB色が見られないのが興味深いところ。